10年前、台湾の路地で出会ったハサミが、今の僕を動かしている ― HMMシザーズ ゴールドの物語

1. 出会いは、10年前の台湾の路地裏で。

あれは、もう10年以上前。
当時、僕は台湾に住んでいて、いつものように休日に散歩をしていた。
ふと立ち寄った文具店の一角に、見たことのない形のハサミが置かれていた。

「なんだ、この形は…」
最初にそう思ったのを、今でもはっきり覚えている。

刃先がすっと伸び、真っ直ぐなハンドル、マットな質感。
まるで“道具”というよりも“彫刻”のような佇まい。
その時の衝撃が、僕の中にずっと残っていた。

それが HMM(Human Made Method) との最初の出会いだった。


2. 時間が経っても忘れられなかった「感触」

当時はただ「すごいハサミがあるな」と思っただけだった。
でも日本に戻ってから、何度も思い出した。
机の上に置かれていたあの金属の質感。
握った時に伝わる“冷たさの中の優しさ”。

そして、2025年の今。
僕は、あの時の衝撃をもう一度確かめたくて、
HMMシザーズを仕入れた。


3. 会社の先輩が持っていた「憧れのハサミ」

実は、僕がこのハサミを本格的に探し始めたきっかけがある。
それは、会社の文房具好きな先輩がデスクで使っていたのを見た瞬間だった。

あの特徴的なフォルム。
10年前の台湾で見た、あの“ハサミ”そのものだった。
「やっぱり、まだあのブランドは生きているんだ」
心の奥が一気に熱くなった。

その瞬間に決めた。
「このハサミを、僕の手で日本に紹介しよう」と。


4. 自分の手で仕入れて、初めて分かったこと

実際に現物を仕入れて、使ってみた。
その感動は、記憶の中のハサミよりも深かった。

刃を閉じるときの音が“スッ”と静かで、
まるで空気を切っているような感覚。
上下を持ち替えれば、すぐにペーパーナイフに変わる。

使うたびに、「設計した人の思想」が手に伝わる。
無理がなく、直感的で、そして美しい。

「道具は使うもの。でも、いい道具は“体験”になる。」

この言葉の意味を、HMMシザーズを通して理解した気がした。


5. ゴールドモデル ― 静かな誇りをまとう道具

僕が今回仕入れたのは、ゴールドモデル
この色には、特別な感情がある。

チタンコーティングが施された刃は、派手すぎず、控えめな輝き。
光を受ける角度で柔らかく表情を変え、
まるで“時を映す鏡”のようだ。

真鍮のベースに立てると、まるで美術品。
毎朝、コーヒーを淹れながらこのハサミを眺める時間が、
僕にとって小さな儀式になっている。


6. 「売るため」ではなく、「伝えるため」に仕入れた

正直に言うと、このハサミは安くない。
でも、僕は“値段”で仕入れたわけではない。

10年前に感じた「これは本物だ」という直感を、
10年越しに誰かと共有したかった。

クラフトマンシップとは、トレンドとは逆の方向にある。
効率ではなく、丁寧さ。
大量生産ではなく、誠実な手仕事。

僕がHMMシザーズを仕入れたのは、
「海外のクラフトマンシップを、日本にきちんと紹介したい」
という想いの第一歩だった。


7. 道具を選ぶということ=自分の時間を選ぶということ

ハサミを使う瞬間って、ほんの数秒。
でも、その一瞬の質が、日常を変えることがある。

きれいに切れる。
静かに閉じる。
手に馴染む。
たったそれだけのことが、心を整えてくれる。

HMM Scissors は、そんな「心の温度」を変える道具だと思う。
僕にとっても、ブランドとしても、忘れられない一本。


8. これからのこと

僕の仕事は「売る」ではなく「伝える」こと。
このハサミをきっかけに、
もっと多くのクラフトマンシップを届けていきたい。

そして、10年前の自分のように、
「この形、なんだろう?」と立ち止まってくれる人が
どこかで生まれたら、それが一番うれしい。

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